短期雇用者の雇用保険や社会保険は?

短期間の仕事に対応するため、期間を決めて人を雇用するか、業務委託をすることを考えています。もし短期雇用する場合、気をつけないといけないのが雇用保険や社会保険。「短期雇用には要らないだろう」と考えていると、法令違反になることも。

ちょっと調べてみると、社会保険の場合、日雇いや2ヶ月以内の雇用期間があらかじめ定まっている場合には加入義務はないようです。

それ以外は、労働時間は1日または1週間の所定労働時間が、一般社員の4分の3以上かつ、1ヶ月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上の場合は、短期雇用といえども社会保険への加入義務が生じます。

雇用保険の方は、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ、31日以上雇用する見込みがある場合には、加入の義務が生じます。

この31日以上雇用、というのは、雇用期間を明示せずに雇用する場合にも該当するそうなので、あらかじめ30日以内を明示した雇用契約でない限り、雇用保険の加入義務が発生するようです。

今回当社が依頼する仕事の場合は、延べの期間は31日以上となるものの、継続して週20時間勤務があるわけではないので、雇用保険や社会保険の義務は生じないようです。

人的責任・リスクを負う

段々事業が軌道に乗り出すと、徐々に人手が足りなくなります。事業規模の拡大にともない、経理・労務など事務処理などの負担軽減、営業、製造、販売などの各機能に人が必要になってくるかもしれません。するとサラリーマン時代には経験しなかった、「人を雇用する」責任が生じます。これが脱サラ組だとなかなかマネージするのが難しいところです。どのように採用するのか、契約条件は?、各法律は?など細かいことにも気を払い、従業員が気持ちよく働ける職場環境の維持や、はたまたセクハラ対策も考えなければなりません。さらには、業績が好調時ならいいけれど不調になればリストラをしなければならない側になります。考え方によっては、リストラする側よりリストラされるほうが心苦しくないかもしれません。

対策:

  • ともかく、業績が安定していない間、あるいは人事・労務に疎い間は、アウトソーシングを考える。例えば派遣会社にスタッフの派遣を依頼することをまず検討すること。派遣会社のマージンが高いと、ここでケチってはいけません。派遣会社では、各職員の健康診断、有給、雇用契約、セクハラ対策など、システマティックに対応していて、起業したての会社にとっては頼れる存在です。万が一派遣先の誰かがセクハラした場合に備えて、派遣スタッフの相談専用ラインを設けていて、なるほどなぁ、これぐらいしないと会社運営の責任ははたせないな、と勉強しました。ちなみに私の会社では女性の派遣スタッフさんにきていただいていますが、セクハラの疑いがかかるかもしれない唯一の男性は社長。ちなみに、私の夫なので、複雑な気もしますが、大事なことです。
  • それでも職員を採りたい場合、採用には時間と手間をかける。会社理念や社長の方針をしっかりと説明し、共感する人材を採用すること。自社の職員を採用したいならば、人事や労務の法制などしっかり勉強し(あるいは専門家に委託相談して)、業績低迷時に自分がスタッフを切らなければならないことを想定し、責任を認識して採用すること。
  • 雇用条件を、事業レベルとマッチさせること。1年後の業績がかなりあやしければ、年単位の契約も考える必要あり。終身雇用として、彼・彼女の人生を背負えるかどうか、肝に銘じること。
  • 従業員満足を常に考えること。給与や福利厚生だけでなく、配属先の配慮、仕事の自由裁量度、研修制度、職場環境、職場の人間関係マネージメント、職場内のコミュニケーションの円滑化、など常に考えていくことです。得にサービス業を営業される方は、お客さんが接するのが従業員となるので、常にこれを考えていく必要があります。

従業員満足を優先する経営の参考書は「本を読む」サイトに紹介してあります。

事業の立ち上げ時は、忙しくなる。家庭とのバランスがとりにくい

事業を立ち上げるときは、未知なことに足を踏み入れる場合が多く、やることがいっぱいです。開業準備や、取引先や顧客の開拓、経理や資金繰り、税理士などの専門家の選任、人の採用・訓練など。あー、やるべきことがいっぱい!で焦燥感にかられ、実施、忙しくなりがちです。

対策:

  • シングルの方は体に気をつけて。体が資本ですから。睡眠時間は確保しましょう。寝ないと結果的に非効率です。
  • また家庭もちの方は、健康以外に、家庭という人間関係のメインテナンスを忘れずに。

起業前に家族とよく話しあい、協力体制を固めるということが非常に重要となります。起業本を読む限りでは、家族に反対されてまで起業すると、ビジネスと家庭両方失敗することが多いようです。また、家族の方との接点を意図的につくりだし(朝ごはんはいつも一緒、とか)、かならず互いのコミュニケーションの場所・時間をみつけだしましょう。夫婦で共同運営すると、ともかくいっつも一緒なので、この意思疎通の風通しを確保するという点では問題が生じにくいのですが、いったん仕事上か家庭上で関係がコケだすと、両方ともダメになっていくという悪循環にはまりますので、この辺が難しいところでしょうか。

調達資金の責任・リスクを負う

資本金1円が法的に許される時代といっても、会社設立後、即座にキャッシュが生じるような事業でない限り、現実にはあらかじめある程度の資金確保が必要です。設備投資、人材投資、キャッシュインとキャッシュアウトのタイミング調整のための運転資金など、ともかく最初からお金が必要となるのです。

投資資金が少額で、失敗してもその分あきらめがつく程度のリスクであればよいのですが、自分の手におえないならかなりのリスクです。出資者がいなく、無理して金融機関からの借入金をして資金調達をする場合、金融機関は通常個人保証を要求し、事業が失敗すれば無限責任の債務だけが残るという結果に…。

対策:

  • スモールビジネスならば資本金は自己資金で。ビッグビジネスならば、資本金や開業資金を個人保証つきの融資に頼るのはハイリスク!です。
  • 出資者を説得できないビッグビジネスのビジネスプランンでの創業はやめる。出資者の賛同を得られるまでビジネスプランを再考しよう。あなた個人の支援者である親・親類・友人以外の出資者は、経済的合理性を考えて投資しています。その反応を素直に受け止め、安易に融資に飛びつかないこと。
  • 創業前に数多くの失敗の経験をつもう。創業後も事業の失敗も想定し、リスク管理をしよう。

「予想外」を予想しないリスク

このブログは、元々固定したページで作っていた「起業支援」サイトの内容を、ブログに構成し直して作り直すつもりでいました。そうこうしている内に、東日本大震災が起きてしまい、原発事故が発生しました。原発の関係者は口を揃えて「予想外のこと」だと言います。

この「予想外」を少し考えることから、このブログを始めたいと思います。

「予想外」で思い出すのは、トヨタの車がアメリカで暴走し、死亡事故を起こした事件です。これでトヨタは大損害をこうむりました。事故が起きた原因は、運転席の下に敷かれた形の合わないフロアマットがアクセルペダルに引っ掛かったためだったそうです。これはもちろん、トヨタで自動車の設計をしている人たちにしてみれば予想外。この予想外が大損害を引き起こしてしまい、結果、トヨタの経営陣は右往左往。

一方電子制御システムに問題があるのではないか、と指摘があり、徹底的に調査がされましたが、こちらは「シロ」の判定が出ました。つまり、技術的に「予想内」のことに対しては徹底的に対応がなされている、ということになります。

この原発とトヨタの「予想内」と「予想外」、非常に構造が似ていると思います。これが日本に特徴的な考え方、と言い切るまでの自信はないですが、かなり良く見られる考え方とは言えるかもしれません。

すなわち人智で予想可能な範囲のことは徹底的に考えて、技術的な手を打つ。ところが、人智で予想不可能なことがある、つまり他人の思いがけない行動とか、自然とか、そのことを忘れて「十分やっている」と思いこんでしまう。

当社は政府開発援助(ODA)からの売り上げも一部あります。今回の震災でODAの減額はほぼ確実なものとなっており、予定していた仕事が入らなくなる可能性が高くなってきました。さて、これは「予想外」のことか「予想内」のことか、どちらでしょうか。

震災はもちろん予想しておらず、従って、いきなり仕事が来なくなるということを予想していたわけではありませんから、その意味では「予想外」です。しかし、その一方で、ODAは政府が決めるものであり、当社のコントロール下にないものであることは十分承知して起業しています。

つまり、形の合わないフロアマットを敷くユーザーとか、いきなり動く地殻とかと同じで、自分たち以外の誰かが勝手に一方的に決めるものは、こちらの都合にかかわらずいきなり変化することがある、ということは予想しています。

「キツネとハリネズミ」というたとえ話が西洋にはあるそうで引用してみます。

「キツネはハリネズミを捉えようと知恵を駆使し、複雑な作戦をたくさん編み出しますが、ハリネズミに出来ることはただ一つ、攻撃されたときに体をまるめるだけ。キツネはこのシンプルだけど恐ろしく効果的な作戦の前に成す術もないというものです。」

つまり自社の強みは何か?絞り込むということ。ビジネス・マネージメントではよく言われることですし、平時には全くその通りかと思います。つまり「平時が続く」という想定であれば全く同意です。

これに対して、ノーベル経済学賞をとったアマルティア・センの「貧困と飢饉」には、飢饉という緊急時に生存を保証したのは「エンタイトルメント」であった、としています。エンタイトルメントというのは、緊急時などに「頼る先」のことで、特定の人や家族が持っている頼る先全部を「エンタイトルメント・セット」と呼びます。

エンタイトルメントは個人の食糧調達の話ですが、例えば震災や津波、原発事故の被災者の方々が故郷を追われてしまった後に、生活をどう成り立たせるかは、まさに頼る先がどれくらいあるかどうかによって異なってきます。

一方企業は?と考えると、もちろん例えば立て直しに資金的な支援をしてくれるところがあるか、というような意味ではエンタイトルメントの考え方も有効ですし、私自身は別の考え方も持っています。

つまり、「自社の強み」自体を「多様性」に求めることです。

平時に機会をどれくらい持っているかを「オポチュニティ・セット」と呼びます。一芸に秀でることは、つまりこのオポチュニティ・セットの中から絞り込んでいく作業を伴います。それが一般的に企業が行うことです。それが一般的に有効であることは、他分野に手を出してしくじった企業が多いことからも証明されていると言えます。

では、当社のように、小さな企業の場合でも同じでしょうか。私自身は「異なったロジック」が機能しうると考えています。つまり、豊かなオポチュニティ・セットを持つことを「一芸」とする、ということです。例えば別のブログに書きましたが、著書の印税を会社の収入に入れています。

大きな企業なら、相当のシェアや売り上げを出さない限り、企業の維持ができません。でも、零細であれば、なんとか社員の給料分を稼げば生き延びることができます。ニッチ・ビジネスをうまく組み合わせれば、平時にはオポチュニティ・セットであるものが、緊急時にはエンタイトルメント・セットとして機能するかもしれません。

大きなニッチは探すのが困難、当社のようなリソースが限られている零細には縁遠い世界です。でも小さなニッチであれば、商品のニッチ、地理的なニッチ、いろいろなニッチを組み合わせることによって、比較的多く見つけることが可能です。

多様性自体を強みにして、小規模なセルが繋がって拡大して行く、売上としてはさほど大きくならないけど、非常に強い、そのようなビジネスモデルを考えています。